相続税・財産評価

1階テナント専用の駐車場がある賃貸ビルの土地評価
賃貸割合の作り方と、用途が違う各階の区分計算

1階だけが使える駐車場の減額を、どこまで取れるのか。
賃貸割合を場所ごとに変えられるのか。
1階が事業用、2階・3階が賃貸用のとき、小規模宅地等の特例をどう区分するのか。
ひとつの設例を最後まで計算して、通達の条文に戻って確かめます。

設例と、結論の数字

説明のための架空の設例です。金額・面積はすべて仮のものです。

鉄筋コンクリート3階建ての賃貸ビルが1棟。被相続人が土地建物とも所有していました。
各階の床面積は200平方メートル、各独立部分の床面積の合計は600平方メートルです。

1階 クリニック1区画200平方メートル。
持分の定めのある医療法人(被相続人と親族で出資の総額の50%超を保有、相続人が理事長)が
有償で賃借し、診療所として使っています。

2階 10室(各20平方メートル)のうち8室を賃貸、2室が空室。
3階 10室(各20平方メートル)のうち9室を賃貸、1室が空室。
空室は合計3室、床面積60平方メートルです。

土地 建物敷地400平方メートル。その前面に続きで駐車場200平方メートル。
駐車場は1階クリニックの専用で、2階・3階の入居者は使えません。舗装されています。

前提 路線価200,000円、借地権割合60%、借家権割合30%。
建物敷地と駐車場は一体の1画地600平方メートルとして評価できるものとします。

賃貸割合

(200 + 8室×20 + 9室×20)÷ 600 = (200+160+180)÷ 600 = 540 ÷ 600 = 0.90

先に結論

論点結論
1画地600平方メートルの評価額100,560,000円(自用地1億2,000万円 − 減額1,944万円)
駐車場だけ賃貸割合を1.0にできるかできない。600平方メートル全体に一律0.90が及ぶ
一体にできた場合の効果評価額が648万円下がる(自用地評価との比較)
1階と2階・3階で評価単位を分けられるか分けられない。1棟の建物の敷地は1つの利用の単位
小規模宅地の用途区分駐車場を1階に直課できれば事業用333.33平方メートル。按分なら200平方メートル
その差減額額で約1,203万円
空室3室に対応する敷地一時的空室と認められない限り、特例の対象外

駐車場の評価はこうなる

一体の1画地として評価した場合

自用地価額    200,000円 × 600平方メートル = 120,000,000円
貸家建付地評価額 120,000,000 × (1 − 0.6 × 0.3 × 0.90)
         = 120,000,000 × 0.838 = 100,560,000円
減額額      19,440,000円

駐車場200平方メートルもこの1画地に含まれ、貸家建付地評価の対象になります。

一体にできなかった場合と比べる

組み方建物敷地400平方メートル駐車場200平方メートル合計
一体の1画地600平方メートル120,000,000 × 0.838100,560,000円
分けて、駐車場は自用地67,040,000円40,000,000円107,040,000円
分けて、駐車場は賃借権控除2.5%67,040,000円39,000,000円106,040,000円
これが駐車場の評価の結論

一体で評価できるかどうかで、評価額が548万円から648万円動きます。
一方、次章で見るとおり「駐車場だけ賃貸割合を1.0にする」ことはできません。
仮にできたとしても効果は駐車場部分で72万円ほどですから、
力を入れるべきは一体性の立証のほうです。

評価額の内訳(申告書の記載)

賃貸割合が1でないため、相続税申告書の第11・11の2表の付表1(別表1)の作成が必要です。
同別表の記載要領は、空室に対応する部分について自用地として評価した金額を記入するよう求めています。

区分面積単価評価額
賃貸中に対応する部分540平方メートル164,000円88,560,000円
空室に対応する部分(自用地)60平方メートル200,000円12,000,000円
合計600平方メートル100,560,000円

単価164,000円は 200,000 ×(1 − 0.6 × 0.3)です。
空室対応の面積60平方メートルは 600 × 60 ÷ 600 で求めます。
この分解は恒等式で、必ず総額と一致します。

やってはいけない計算

1平方メートルあたり167,600円(=100,560,000÷600)という一律単価を使う方法は誤りです。
別表1の記載要領が、空室対応部分は自用地単価で記入するよう求めているためです。
一律単価で用途区分ごとの評価額を出すと、空室部分に含まれる自用地プレミアム(36,000円)を
減額対象の面積にも薄く配ってしまい、減額額が過大になります。

なぜ駐車場だけ賃貸割合100%にできないのか

「賃貸割合」は、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合による。

財産評価基本通達26(2)

賃貸割合 = Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)

分子も分母も家屋の床面積です。土地の地積は一切登場しません。
したがって賃貸割合は、1棟の家屋について1つしか算定されません

駐車場が1階専用であることは、土地の側の事情であって、家屋の各独立部分の賃貸状況ではありません。
だから賃貸割合の算定要素になりません。
一体の1画地とした以上、駐車場200平方メートルを含む600平方メートル全体に一律0.90が及びます。

これを正面から否定した裁決

国税不服審判所 平成8年6月13日裁決(裁決事例集No.51-575頁)

入居者が使っていた部分についても、貸家建付地評価を認めなかった

全部を自用地に

賃貸マンションに隣接する33台分の駐車場のうち、入居者14台、入居者以外18台、未利用1台という事案です。
審判所は、入居者が利用していた14台分についてすら貸家建付地評価を認めず、
賃借権の控除も認めず、駐車場全体を自用地として評価すべきとしました。

混在しているときに利用実態に応じて按分する、という処理は採られていません。
「一部だけ高い割合を当てる」という発想が通らないことを示した先例です。

1棟の建物の敷地を、階で割ることはできない

宅地の評価単位は「1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)」です(財産評価基本通達7-2(1))。
分けるのはの単位であって、階の単位ではありません。
質疑応答事例「宅地の評価単位」も、貸家が数棟あるときは各棟の敷地ごとに1画地とするとしています。

B土地については、B土地を一体として評価した価額を、原則として、建物の自用部分と貸付部分との床面積の比により按分し、それぞれ自用部分の価額と貸付部分について貸家建付地としての評価をした価額を算出し、その合計金額をもって評価額とします。

国税庁 質疑応答事例「宅地の評価単位-自用地と自用地以外の宅地が連接している場合」

地面を切り分けるのではなく、建物の床面積の比で価額を按分する。これが通達の建て付けです。

家屋の借家人は家屋に対する権利を有するほか、その家屋の敷地についても、家屋の賃借権に基づいて、家屋の利用の範囲内で、ある程度支配権を有している

国税庁 質疑応答事例「貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価」

1棟の中に借家人が何人いても、敷地が借家人ごとに分割されるわけではありません。
したがって「1階+駐車場」と「2階・3階の底地」に分ける計算は成立しません。
2階・3階の賃貸状況は、評価単位ではなく賃貸割合の分子・分母の中で処理されます

用途が違っても結論は同じです。
借家権割合も用途では変わらず、現在は全国すべての国税局の財産評価基準書で30%とされています。
なお区分所有建物で専有部分ごとに評価が分かれるのは、敷地利用権が法律上分属しているためで、
1棟を単独で所有している建物とは理屈が違います。

一体で評価できるかの分かれ目

貸家の敷地に隣接する駐車場にあっては、その駐車場の利用者がその貸家の賃借人に限られるなど、契約上も、利用状況の上でも貸家の目的に供されている宅地と駐車場とが一体である場合に限り、その駐車場も貸家の賃貸借と一体の状態にあるものとし、貸家の敷地と駐車場の敷地は利用の単位が同一である一画地の宅地として、全体を貸家建付地として評価することが合理的であると解すべきである。

国税不服審判所 平成8年6月13日裁決

一体利用を認めた裁判例

京都地裁 平成24年2月29日判決(税務訴訟資料262号順号11898)

入居者専用駐車場について、建物敷地との一体利用を認めた

一体性を肯定

共同住宅の北側駐車場782.80平方メートル、共同住宅敷地717.54平方メートル。
居室15室(13室入居)に対し駐車スペース26台分。入居者全員が利用契約を締結し、入居者以外の契約者はなし。
入口に「専用駐車場」の看板がありました。

裁判所は一体利用を認め、課税庁の3つの主張をいずれも退けています。

  • 区画数が戸数超26台に対し15室でも「1戸につき自動車を2台保有する世帯があることを想定して駐車場を設計し利用に供することもあながち不合理とはいえない」
  • 契約が別建て「本件北側駐車場の利用契約は実質的に本件共同住宅の賃貸借契約の一部であるともいえ」
  • 契約主体が違う法人賃借人で駐車場契約者が従業員個人でも「契約主体の形式的な相違が生じるのもやむを得ない場合があり、利用の一体性の判断に影響があるとはいえない」

読み方に注意が必要です。
この争点では原告の主張が通りましたが、更正処分の認定事実と同一で納付税額に変更がなかったため、請求自体は棄却されています。
また、この一体評価は課税庁の更正処分と同じ立場でした。
「一体評価を勝ち取った判決」と読むと誤解を招きます。

2つを並べると

一体性の決め手は、「建物の賃借人以外に利用者がいるかどうか」に収斂します。
契約書に専用と明記されていないこと、対価が別建てであること、台数が戸数を上回ることは、
いずれも決定打になりません。

クリニックの場合に特有のリスク

平成8年裁決の基準は「駐車場の利用者がその貸家の賃借人に限られる」ことです。
ところがクリニックの駐車場は患者用でもあり、患者は賃借人ではありません。
契約上の利用者は医療法人(賃借人)ですが、現実の利用者に賃借人でない者が多数含まれる点は、
否認材料になり得ます。
「一体で評価できる」ことを所与の前提に置かず、ここをリスクとして見ておく必要があります。

小規模宅地等の特例 用途区分の計算

1階は特定同族会社事業用宅地等(400平方メートル・80%減)、
2階・3階は貸付事業用宅地等(200平方メートル・50%減)の候補になります。
問題は、600平方メートルの土地をどう割り振るかです。

建物の敷地は床面積按分

600平方メートル(宅地の面積)× 200平方メートル(3F部分の床面積)÷ 600平方メートル(建物の総床面積)× 2分の1(乙の持分)= 100平方メートル

国税庁情報「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る相続税の申告書の記載例等について(情報)」(令和3年4月1日付・資産課税課情報第9号)事例1

同情報の事例3は「特定同族会社事業用宅地等と貸付事業用宅地等が混在する場合」を扱い、
同族法人に建物1棟を賃貸し、法人が1階で自己の事業を営み2階を転貸している事案で、
分母を「特定同族会社に貸し付けられている建物の総床面積」としています。
本設例の直接のひな型です。

ここが分岐 駐車場は按分か、1階に直課か

1

床面積按分による場合

事業用 600 × 200 ÷ 600 = 200.0000平方メートル
貸付用 600 × 400 ÷ 600 = 400.0000平方メートル

2

駐車場を1階に直課する場合

事業用 400 × 200 ÷ 600 + 200 = 333.3333平方メートル
貸付用 400 × 400 ÷ 600 = 266.6667平方メートル

直課を支える考え方

反証材料も正直に書いておきます

同情報の事例10は、土地600平方メートル・建物総床面積400平方メートル(建築面積200平方メートル)という事案で、
建物の建ち面積を大きく超える部分まで含めて600平方メートル全体を床面積比で按分しています。
公表されている按分例(事例1・3・10・14)は、いずれも一の宅地等の全体を建物の床面積比で按分しており、
直課しているのは建物が2棟ある事例2だけです。

「駐車場を直課してよい」と明示した条文・通達・質疑応答事例・裁決・国税庁情報は見当たりません。
逆に「必ず床面積按分せよ」と読める明文もありません。
説明は通りますが、公表例に直接の支えがない立場です。

採用する場合は、舗装が構築物であることの疎明、利用者が法人に限られることの疎明、
区分の方法を申告書または書面添付で明示し、床面積按分との差が分かるようにしておくことをおすすめします。

空室3室に対応する敷地は、特例の対象外

宅地等が……被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等に該当するかどうかは、当該宅地等が相続開始の時において現実に貸付事業の用に供されていたかどうかで判定するのであるが、貸付事業の用に供されていた宅地等には、当該貸付事業に係る建物等のうちに相続開始の時において一時的に賃貸されていなかったと認められる部分がある場合における当該部分に係る宅地等の部分が含まれることに留意する。

租税特別措置法関係通達69の4-24の2

含まれるのは「一時的に賃貸されていなかったと認められる部分」に限られます。
本設例は賃貸割合を0.90としており、これは一時的空室に該当しない前提で組まれています
(該当するなら賃貸割合は1.0になります)。
したがって空室に対応する敷地60平方メートルは、特例の対象外です。

財産評価基本通達26(注)2の一時的空室と、措置法関係通達69の4-24の2の一時的空室は、条文上は別個の判定です。
ただし判断要素が実質的にほぼ重なるため、実務上は同じ結論になるのが通例です。

空室3室が一時的空室と認められる場合は、賃貸割合が1.0になります。
評価額は 120,000,000 ×(1 − 0.18)= 98,400,000円 となり、この論点自体が消滅します。
募集の継続状況と空室期間を先に確認してください。

申告書別表1の記載

空室対応部分の面積は恒等式により60平方メートルに固定されます。
直課はその残り540平方メートルの中で行います。

区分駐車場を直課床面積按分
 面積評価額面積評価額
特定同族会社事業用333.3333平方メートル54,666,667円200.0000平方メートル32,800,000円
貸付事業用(賃貸中)206.6667平方メートル33,893,333円340.0000平方メートル55,760,000円
空室対応(対象外)60.0000平方メートル12,000,000円60.0000平方メートル12,000,000円
合計600.0000平方メートル100,560,000円600.0000平方メートル100,560,000円

限度面積の有利判定

特定事業用等宅地等の面積 × 200/400 + 特定居住用宅地等の面積 × 200/330 + 貸付事業用宅地等の面積 ≦ 200平方メートル

租税特別措置法69条の4第2項第3号

本設例は特定居住用がないため、特定事業用等の面積 × 2分の1 + 貸付事業用の面積 ≦ 200平方メートル
かつ特定事業用等は400平方メートル以下、という条件になります。

どちらを優先するか

区分枠1単位で使える面積減額率枠1単位あたりの効率
特定事業用等2平方メートル80%1.6
貸付事業用1平方メートル50%0.5

枠の消費が半分で済むことによる2倍と、減額率の比80対50による1.6倍が掛け合わさって、
3.2倍の差になります。
単価が同じである限り、特定同族会社事業用を限界まで選び、残枠を貸付事業用に回すのが最有利です。

計算

 駐車場を直課床面積按分
特定同族会社事業用の選択333.3333平方メートル(枠消費166.6667)200.0000平方メートル(枠消費100.0000)
貸付事業用の選択33.3333平方メートル100.0000平方メートル
限度面積の判定166.6667+33.3333=200.0000 適合100.0000+100.0000=200.0000 適合
事業用の減額43,733,333円26,240,000円
貸付用の減額2,733,333円8,200,000円
減額額合計46,466,667円34,440,000円
課税価格(宅地等)54,093,333円66,120,000円
差は約1,203万円

46,466,667 − 34,440,000 = 12,026,667円
80%減の枠に載せられる面積が200平方メートルから333.33平方メートルに増えるためです。

参考までに、特定同族会社事業用だけを選んで貸付事業用を選ばない場合は
333.3333 × 164,000 × 0.8 = 43,733,333円。
併用したほうが273万円ほど有利です。

建物(貸家)と駐車場の舗装(構築物)の評価額は、上の表とは別に加算されます。
貸家は 固定資産税評価額 ×(1 − 0.3 × 0.90)(財産評価基本通達93)。
舗装は (再建築価額 − 償却費の額の合計額)× 100分の70(同97)。
構築物には借家権相当の減額規定がありません。

駐車場の貸し出し方で結論が変わる

貸し出し方貸家建付地評価小規模宅地等の特例
A 使用料を建物賃料に含める
(建物賃貸借に付随)
可。駐車場も含め1画地を貸家建付地 措通69の4-23(2)。舗装は「建物等」に含まれるため、その敷地が該当。特定同族会社事業用の候補
B 土地の賃貸借として別途有償で貸す 危うい。下記の裁決 措通69の4-23(1)「当該法人に貸し付けられていた宅地等」に文字どおり該当。整理しやすい
C 無償で使わせる 不可 不可
国税不服審判所 平成24年10月10日裁決(裁決事例集No.89)

契約を別建てにすると、賃借人が同じでも駐車場は貸家建付地にならない

パターンBの警告

被相続人が同一の法人に対し、建物を「建物一時使用による賃貸借契約書」で、
残りの土地約1,340平方メートルを「駐車場一時使用による賃貸借契約書」で、別契約により貸していた事案です。

審判所は、建物敷地部分は財産評価基本通達26の貸家建付地としつつ、
駐車場部分については「貸家の敷地の用に供されている宅地」部分がないことが明らかであるとして、
同通達86の貸し付けられている雑種地として評価すべきとしました。

トレードオフ

パターンBは、小規模宅地を確実にする代わりに貸家建付地を差し出す選択です。
数字だけ見れば、駐車場を貸家建付地から外すと評価額が約648万円増える一方、
小規模宅地の減額は約1,203万円増えます。
ただし、一体評価と直課の両方を通すことを狙うなら、パターンAのまま措通69の4-23(2)で押すほうが論理が一貫します。

パターンCの注意

措置法関係通達69の4-4の括弧書は「無償(相当の対価に至らない程度の対価の授受がある場合を含む)」としています。
低額の駐車場代を取っているだけでは、無償と同じ結論になり得ます。

駐車場業の除外規定との関係

措置法関係通達69の4-23の注1は、法人の事業には
「不動産貸付業その他措置法令第40条の2第7項に規定する駐車場、自転車駐車場及び準事業が含まれない」としています。

除外されるのは法人の事業の性質であって、土地の物理的な用途ではありません。
医療法人が患者・職員用の駐車場として自ら使っている場合は、駐車場業ではなく診療所業の一環ですので、
この除外には当たりません。
仮に医療法人がその駐車場を第三者に時間貸し・月極で貸していれば、その部分は法人の駐車場業となり除外されます。

賃貸割合と小規模宅地で、分母の作り方が違う

 分子分母
賃貸割合(評基通26(2))賃貸されている各独立部分の床面積の合計当該家屋の各独立部分の床面積の合計
小規模宅地の按分(国税庁情報)用途部分の床面積建物の総床面積

賃貸割合の分母は「各独立部分」ですので、共用廊下・階段・エレベーター等の共用部分は入りません。
それ自体を独立して賃貸に供することができないためです。
一方、小規模宅地の按分の分母は「建物の総床面積」で、登記床面積や延べ面積には共用部分が含まれます。

本設例は共用部分を捨象しているため両者が一致しますが、実物件では食い違います。

分母を字義どおりに取ると特例枠が漏れる

専有600平方メートル+共用60平方メートル=総床面積660平方メートル、土地600平方メートルとすると

事業用 600 × 200 ÷ 660 = 181.82平方メートル
貸付用 600 × 400 ÷ 660 = 363.64平方メートル
合計  545.45平方メートル → 54.55平方メートルが宙に浮きます

この54.55平方メートルは「それ以外の宅地等」に落ち、特例枠を丸ごと失います。

実務では共用部分を各用途の専有面積比で割り振ります。
その結果は、専有部分の合計で按分するのと数学的に一致します

事業用 600 × 200 ÷ 600 = 200.00平方メートル
貸付用 600 × 400 ÷ 600 = 400.00平方メートル

ただし、小規模宅地について共用部分を各用途に按分することを明示した通達は見当たりません。
最も近いのは地価税法取扱通達6-3(3)(共用の施設の用に供されている部分は各建物等の敷地部分の面積比により按分する)です。
なお地価税は課税停止中であり、同通達の按分基準は「建築面積の比」で床面積比ではありません。
主たる根拠には置かず、補強材料にとどめるのが安全です。

クリニック専用のエントランスや待合ホールのように使われ方が偏っている共用部分は、
機械的な按分ではなく実態に応じた割付けを検討すべきです。

取得者が分かれるとき

駐車場を複数の相続人が分けて取得する場合の扱いも、あわせて整理しておきます。

土地の評価単位は、原則として、遺産分割後の取得者ごとに区分した後、利用の単位となっている土地ごとに判定した評価単位を基に評価すべき

国税不服審判所 平成28年12月20日裁決
建物を持たない側は貸家建付地にならない

土地だけを取得した人の部分は「貸家の敷地の用に供されている宅地」に当たりません。
自用地評価か、土地そのものの利用を目的とする賃貸借であれば賃借権控除にとどまります。
駐車場としての保管契約であれば、賃借権控除も認められず自用地評価です
(タックスアンサーNo.4627、平成8年6月13日裁決)。

さらに、賃貸人の地位の承継が効いてきます。
駐車場を土地の賃貸借として貸していた場合は、土地を取得した人が民法605条の2第1項により賃貸人の地位を承継し、賃料を得るので貸付事業用宅地等の候補になります。
しかし駐車場使用料を建物の賃料に含めていた場合、賃貸人の地位を承継するのは建物の所有者です。
土地だけを取得した人は賃料を得ませんので、貸付事業用宅地等は使えません。

判定の基準日が2つに分かれます。
地目の判定と利用の単位の現況の判定は課税時期(相続開始時)の現況によります。
一方、評価単位の区分は分割後の取得者ごとに行います。

確認しておきたいこと

参考にした条文・通達・公表事例