相続税・財産評価

1階テナント専用の駐車場がある賃貸ビルの土地評価
評価単位の切り方と、賃貸割合の分母の作り方

1階だけが使える駐車場の減額を、どこまで取れるのか。
賃貸割合を場所ごとに変えられるのか。
1棟の建物の敷地を階で割れるのか。
通達の条文に戻って、できることとできないことを整理します。

設例と、結論

説明のための架空の設例です。

鉄筋コンクリート3階建ての賃貸ビルが1棟あります。
1階は全部を法人に貸し、その法人が診療所として使っています。
2階と3階は住戸が合計10室あり、そのうち9室を賃貸中、1室が空室です。
ビルの敷地は400平方メートル。
その前面に続きで駐車場が200平方メートル広がっており、
1階の法人の専用として使われています。
2階・3階の入居者は、この駐車場を使えません。

被相続人はこの土地と建物をすべて所有していました。
相続人は2人で、建物と敷地、駐車場の半分を相続人Aが、
駐車場の残り半分を相続人Bが取得します。

よく出る4つの疑問

1

駐車場は1階専用だから、そこだけ賃貸割合100%にできないか

できません。賃貸割合は家屋の各独立部分の床面積でのみ算定するもので、1棟の家屋について1つしかありません。

2

「1階+駐車場」と「2階・3階の底地」に分けられないか

分けられません。1棟の建物の敷地は、その建物の用に供されている限り1つの利用の単位です。

3

では、駐車場だけ切り出せば有利になるのでは

切り出した瞬間に「貸家の敷地」ではなくなり、貸家建付地の減額そのものが取れなくなります。

4

取得者ごとに評価単位を分けてよいか

分けてよいのが原則です。ただし建物を持たない側の土地は、貸家建付地になりません。

この論点の骨格

減額を取りに行く方向は2つしかありません。
ひとつは駐車場を建物敷地と一体の1画地にすること
もうひとつは賃貸割合そのものを正しく計算し直すことです。
「分けたうえで、分けた部分に高い賃貸割合を当てる」という第三の道はありません。

賃貸割合は「家屋の床面積」でしか決まらない

貸家建付地の価額は、次の算式で計算します(財産評価基本通達26)。

自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合

このうち賃貸割合の算式は、同通達26(2)に次のとおり定められています。

賃貸割合 = Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)

財産評価基本通達26(2)

ここが出発点です。
分子も分母も家屋の床面積であって、土地の地積はまったく登場しません。
つまり賃貸割合は、1棟の家屋について1つしか算定されません。

同じ1画地の宅地の中で、場所ごとに違う賃貸割合を使うという取扱いは、
財産評価基本通達にも、国税庁の質疑応答事例にも見当たりません。

「定めがない」だけではない

これを正面から否定した公表裁決があります。

国税不服審判所 平成8年6月13日裁決(裁決事例集No.51-575頁)

入居者が使っていた部分についても、貸家建付地評価を認めなかった

一体性を否定

賃貸マンションに隣接する33台分の駐車場のうち、14台を入居者が、18台を入居者以外が利用していた事案です。
審判所は、入居者が利用していた部分についてすら貸家建付地評価を認めず、賃借権の控除も認めず、
駐車場全体を自用地として評価すべきとしました。

混在しているときに利用実態に応じて按分する、という処理は採られていません。
「一部だけ高い割合を当てる」という発想が通らないことを示した先例です。

1棟の建物の敷地を、階で割ることはできない

宅地の評価単位は「1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地)」です(財産評価基本通達7-2(1))。

分けるのはの単位であって、階の単位ではありません。
質疑応答事例「宅地の評価単位」は、貸家が数棟あるときは
原則として各棟の敷地ごとに1画地の宅地とする、と定めています。
階で分けるという記述はどこにもありません。

混在しているときの処理は、按分であって分割ではない

1棟の中に自用部分と貸付部分が混ざっている場合、通達が定める処理は明確です。

B土地については、B土地を一体として評価した価額を、原則として、建物の自用部分と貸付部分との床面積の比により按分し、それぞれ自用部分の価額と貸付部分について貸家建付地としての評価をした価額を算出し、その合計金額をもって評価額とします。

国税庁 質疑応答事例「宅地の評価単位-自用地と自用地以外の宅地が連接している場合」

地面を切り分けるのではなく、建物の床面積の比で価額を按分する
これが通達の建て付けです。

そもそも借家権は敷地全体に及ぶ

家屋の借家人は家屋に対する権利を有するほか、その家屋の敷地についても、家屋の賃借権に基づいて、家屋の利用の範囲内で、ある程度支配権を有している

国税庁 質疑応答事例「貸家が空き家となっている場合の貸家建付地の評価」

1棟の中に借家人が何人いても、敷地が借家人ごとに分割されるわけではありません。
したがって「2階・3階部分に対応する底地」だけを切り出すという計算は成立せず、
2階・3階の賃貸状況は賃貸割合の分子・分母の中で処理されます

用途が違っても結論は同じです。
2階と3階で用途が異なっていても、評価単位の判定には影響しません。
借家権割合も用途では変わらず、現在は全国すべての国税局の財産評価基準書で30%とされています。
もっとも財産評価基本通達94(1)は「国税局長の定める割合による」と定めていますので、申告年分の基準書で確認してください。

区分所有建物は別の話です。
区分所有建物で専有部分ごとに評価が分かれるのは、敷地利用権が法律上分属しているためです。
1棟を単独で所有している建物の敷地を用途で割るのとは、理屈がまったく違います。

駐車場を建物敷地と一体にできるかの分かれ目

まず地目の判定から

駐車場は建物の敷地そのものではありませんが、
不動産登記事務取扱手続準則68条の「宅地」は
「建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地」と定義されています。
テナント専用の駐車場は「建物の効用を果たすために必要な土地」として
宅地と判定される余地があります。

雑種地と判定される場合は、財産評価基本通達7のただし書を経由します。

一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする。

財産評価基本通達7 ただし書

一体性の判断基準を示した裁決

貸家の敷地に隣接する駐車場にあっては、その駐車場の利用者がその貸家の賃借人に限られるなど、契約上も、利用状況の上でも貸家の目的に供されている宅地と駐車場とが一体である場合に限り、その駐車場も貸家の賃貸借と一体の状態にあるものとし、貸家の敷地と駐車場の敷地は利用の単位が同一である一画地の宅地として、全体を貸家建付地として評価することが合理的であると解すべきである。

国税不服審判所 平成8年6月13日裁決

同裁決が一体性を否定した事情は、次のとおりです。

一体評価を認めた裁判例

京都地裁 平成24年2月29日判決(税務訴訟資料262号順号11898)

入居者専用駐車場について、建物敷地との一体評価を認めた

一体性を肯定

本件北側駐車場は本件共同住宅の入居者の専用駐車場であると評価できること、本件共同住宅と本件北側敷地は隣接しており両土地を直接接続する出入口が存することが認められるのであるから、本件共同住宅敷地と本件北側駐車場は一体として利用されていたものということができる。

この判決が実務上重いのは、課税庁の否認主張を3つとも退けている点です。

  • 区画数が戸数超26台に対し15室でも「1戸につき自動車を2台保有する世帯があることを想定して駐車場を設計し利用に供することもあながち不合理とはいえない」
  • 契約が別建て「本件北側駐車場の利用契約は実質的に本件共同住宅の賃貸借契約の一部であるともいえ」
  • 契約主体が違う法人賃借人で駐車場契約者が従業員個人でも「契約主体の形式的な相違が生じるのもやむを得ない場合があり、利用の一体性の判断に影響があるとはいえない」
2つを並べると見えてくること

一体性の決め手は、「建物の賃借人以外に利用者がいるかどうか」の一点に収斂します。
契約書に専用と明記されていないこと、対価が別建てであること、台数が戸数を上回ること。
これらはいずれも決定打になりません。

注意したいところ

逆に言えば、他のテナントが一時的にでも使っていたという事実は、
「賃借人以外の利用者がいる」という認定につながりやすく、平成8年裁決の射程に入ります。
課税時期における利用実態として、他のテナントが現に使っていなかったことを
区画表示・看板・掲示・管理記録・駐車実績で示せるかが分かれ目になります。

参考として、買物客用駐車場について一体評価を認めた質疑応答事例「宅地の評価単位-地目の異なる土地が一体として利用されている場合(1)」と、平成22年2月15日裁決(裁決事例集No.79)があります。
ただし平成22年裁決は貸宅地評価の前提として自用地価額を算定するための論述であり、また一体とされたのは借地人が専属使用していた土地ですので、位置づけには留保が必要です。

分けることと貸家建付地は、同時には成り立たない

ここが、この論点でいちばん誤解されやすいところです。

貸家建付地とは「貸家の敷地の用に供されている宅地」をいいます(財産評価基本通達26)。
減額の根拠は、借家人がその建物の敷地に対して
建物の利用の範囲内である程度の支配力を持っていることにあります。

数字で見るとどうなるか

設例の駐車場200平方メートル、自用地価額を4,000万円、
借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合0.90として計算します。

駐車場部分の扱い減額の計算減額額
一体の1画地として貸家建付地(賃貸割合0.90)4,000万円 × 0.6 × 0.3 × 0.90648万円
同上で、空室が一時的空室と認められた場合(1.00)4,000万円 × 0.6 × 0.3 × 1.00720万円
独立した評価単位として賃借権控除(2.5%)4,000万円 × 0.025100万円
独立した評価単位として自用地評価減額なし0円
比べるべきもの

「駐車場だけ賃貸割合100%」で得ようとしている差は、648万円と720万円の差=72万円です。
一方、一体性が否定されて自用地に落ちたときの損失は648万円
桁がひとつ違います。
力を入れるべきは、賃貸割合をいじることではなく、一体性の立証のほうです。

取得者が分かれるとき

取得者ごとに分けるのが原則

財産評価基本通達7-2(1)の注書は、分割が著しく不合理であると認められるときに限り
分割前の画地を1画地とする、と定めています。
これは例外規定ですので、反対解釈として、
著しく不合理でない限りは分割後の画地すなわち取得者ごとに判定するのが原則になります。

土地の評価単位は、原則として、遺産分割後の取得者ごとに区分した後、利用の単位となっている土地ごとに判定した評価単位を基に評価すべき

国税不服審判所 平成28年12月20日裁決

判定の基準日が2つに分かれます。
地目の判定と利用の単位の現況の判定は、課税時期(相続開始時)の現況によります(相続税法22条、財産評価基本通達7)。
一方、評価単位の区分は分割後の取得者ごとに行います。
「現況は相続開始時、単位は分割後」という使い分けになります。

建物を持たない側の土地は、貸家建付地にならない

設例で相続人Bが取得する駐車場の半分は、相続人Bが建物を所有していませんので、
「貸家の敷地の用に供されている宅地」に当たりません。
評価は、利用の実態に応じて次の3つに分かれます。

利用の実態評価根拠
土地所有者が自ら駐車場を用意して使わせている(自動車の保管を引き受ける契約)自用地評価タックスアンサーNo.4627、平成8年6月13日裁決
借主の費用で車庫等の施設を造ることを認める契約(土地そのものの利用が目的)賃借権の価額を控除同上ただし書、財産評価基本通達86・87
無償で使わせている(使用貸借)自用地評価昭和48年11月1日付直資2-189

土地の所有者が、自ら月極め等の貸駐車場として利用している土地の価額は、その土地の自用地としての価額により評価することになり、賃借権の価額を控除した価額により評価することはできません。

国税庁 タックスアンサーNo.4627「貸駐車場として利用している土地の評価」

したがって「賃貸借なら賃借権控除」という整理は正確ではありません。
土地そのものの利用を目的とする賃貸借であれば賃借権控除、
駐車場としての保管契約であれば賃借権控除は認められず自用地評価
となります。
実務上は自用地評価になるケースが多いと考えておくのが安全です。

賃借権控除を使う場合の割合。
財産評価基本通達87(1)の「地上権に準ずる権利として評価することが相当と認められる賃借権」(賃借権の登記があるもの、権利金等の授受があるもの、堅固な構築物の所有を目的とするもの等)は、法定地上権割合(相続税法23条)と借地権割合のいずれか低い割合を乗じます。
それ以外の賃借権は、同87(2)によりその2分の1です。
舗装だけの駐車場は通常、後者に当たります。
なお同86(1)のただし書の5%・10%・15%・20%は控除額の下限であって、主たる算式ではありません。

見落としやすい論点

駐車場の対価をどう収受していたかで、土地だけ取得した側の扱いが変わります。
土地の賃貸借として収受していた場合は、土地の所有権を取得した者が民法605条の2第1項により賃貸人の地位を承継しますので、その人が賃料を得ることになります。
駐車場使用料を建物の賃料に含めていた場合は、賃貸人の地位を承継するのは建物の所有者です。
土地だけを取得した人は賃料を得ませんので、事実上その人から建物所有者への使用貸借になります。
この違いは、次章の小規模宅地等の特例の可否に直結します。

賃貸割合の分母と、共用部分・登記床面積

分母に共用部分は入れない

賃貸割合の分母は「当該家屋の各独立部分の床面積の合計」です。
「家屋の床面積」でも「登記床面積」でもありません。

上記算式の「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいう。

財産評価基本通達26(注)1

共用廊下、階段、エレベーターホール、機械室などは、
それ自体を独立して賃貸に供することができませんので「各独立部分」に当たりません。
したがって分母にも分子にも入りません

ただし、この結論は通達の文言解釈によるものです。
国税庁が「共用部分を除く」と明示した公表資料は見当たりませんでした。
反対に「共用部分を分母に算入する」とする国税庁資料・裁決も見当たりませんので、解釈として無理のないものと考えられます。
なお管理人室のように、隔壁と扉があり独立した出入口を備えていて独立して賃貸できる構造のものは「各独立部分」に当たりうるため、一律に除外せず個別に判定してください。

登記床面積を分母に使うと何が起きるか

登記床面積には、不動産登記事務取扱手続準則82条により
屋内の階段室とエレベーター室が算入されています
これを分母にそのまま使うと分母が過大になり、賃貸割合が実際より低く出ます。

分母分子結果
登記床面積(共用部を含む・壁心)賃貸借契約書の面積(内法・専有のみ)賃貸割合が大幅に過小。最も危険な組合せ
各独立部分の実測合計(壁心)賃貸中の各独立部分の実測合計(壁心)適正
各独立部分の実測合計(内法)賃貸中の各独立部分の実測合計(内法)適正
いちばん大事なこと

分母と分子で、面積の測り方を揃えること。
片方を登記簿から、片方を契約書から取るのは誤りです。
平面図から各独立部分の面積を計算し直し、分母・分子ともその数値を使うのが本筋です。

登記床面積と平面図の面積が食い違う理由

「共用部分が入っているかどうかの差」と理解されがちですが、
それだけが原因ではありません。

つまり、壁心で測ることと屋内共用部が算入されることはどちらも登記を大きくする方向で、相殺しません。
相殺の関係に立つのは、屋外共用部が算入されないことです。
内廊下・屋内階段型の建物であれば登記床面積が各独立部分の合計を大きく上回り、
外廊下・外階段型であれば差は壁体分程度に縮みます。

固定資産税の課税床面積という第三の数値もあります。
区分所有家屋では専有部分に共用部分を按分加算するため登記床面積より大きくなり、
区分建物でない建物でも未登記の増築部分が現況主義で課税床面積に入ることがあります。
3つの数値があることを前提に、どれを何に使うかを決めてください。

ついでに押さえておきたい3点

空室の扱い

空室の床面積は分母には入り、分子には入りません
一時的な空室と認められる場合は、分母を減らすのではなく分子に加える形になります。

上記算式の「賃貸されている各独立部分」には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない。

財産評価基本通達26(注)2

該当性は、質疑応答事例「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲」の5つの要素で総合判断されます。
課税時期前に継続的に賃貸されてきたか、退去後速やかに募集が行われたか、
空室の期間および他の用途に供されていないか、
空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったか、
課税時期後の賃貸が一時的なものではないか、の5つです。

期間の目安

平成26年4月18日裁決は、空室期間が最も長いもので8年間、
最短のものでも4か月を超える期間に及んでいた事案で、該当性を否定しています。
「1か月程度」という例示との落差は小さくありません。
募集広告、仲介業者への依頼書、課税時期後の賃貸借契約書を揃えたうえで判断してください。

小規模宅地等の特例への影響

入口の要件を落とさない

小規模宅地等の特例は「建物又は構築物の敷地」であることが入口の要件です
(租税特別措置法69条の4第1項、同法施行規則23条の2第1項)。
アスファルトやコンクリートの舗装があれば構築物に当たりますが、
まったくの未舗装では適用の余地がありません。

建物を取得する側

同族法人が事業の用に供している部分は、特定同族会社事業用宅地等(400平方メートル・80%減)の候補です。
要件は、被相続人および親族等が出資の総額の10分の5を超えて有する法人であること、
取得者が申告期限においてその法人の役員であること、
申告期限まで保有しその法人の事業の用に供されていることです。

法人が医療法人の場合は、持分の定めのある医療法人かどうかを先に確認してください。
持分の定めのない医療法人や基金拠出型では、株式も出資も存在しないため10分の5超の判定を行う余地がなく、適用は困難と解されます。

また租税特別措置法関係通達69の4-23は、法人に貸し付けられていた宅地等・建物等について、いずれも「当該貸付けが同条第1項に規定する事業に該当する場合に限る」としています。
無償の貸付け(使用貸借)では特定同族会社事業用宅地等になりません。

土地だけを取得する側

貸付事業用宅地等(200平方メートル・50%減)の候補になりますが、
前章で触れた賃貸人の地位の承継がここで効いてきます。

そのほか、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は原則として除かれます。
例外は、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた場合です。
「事業的規模かどうか」ではなく「3年を超える継続があるかどうか」が要件である点に注意してください。

限度面積の取り合いが起きる

特定同族会社事業用と貸付事業用を併用する場合の調整は次のとおりです
(租税特別措置法69条の4第2項3号)。

特定同族会社事業用等の面積 × 200/400 + 貸付事業用の面積 ≦ 200平方メートル

貸付事業用を1平方メートルでも選択した瞬間に400平方メートルの枠が使えなくなります。
しかも限度面積の枠は相続人全体で1つしかなく、
特例対象宅地等を取得したすべての人の同意書が必要です。
取得者が分かれる場合は、遺産分割の段階で特例の選択方法まで合意しておくことをおすすめします。

床面積按分と共用部分。
1棟の建物の敷地を用途ごとに按分する方法について、条文・政令・通達に明示の定めはありません。
実務の拠りどころは国税庁情報(令和3年4月1日付・資産課税課情報第9号)の「複数の利用区分が存する場合」で、
「宅地の面積 × 用途部分の床面積 ÷ 建物の総床面積 × 持分」という算式が示されています。
ただしこの設例は共用部分が生じない構成であり、共用部分の扱いには言及がありません。

共用部分を各用途の専有床面積の比で按分して加算する方法と、共用部分を除いた専有部分の比だけで按分する方法は、数学的に同じ結果になります。
差が出るのは、特定の用途に専属する共用部分をその用途に直課する場合です。
これを認めた通達・質疑応答事例は見当たりませんので、採用する場合は図面と利用実態による立証が必要です。

なお、賃貸割合は共用部分を分母にも分子にも含めないのに対し、小規模宅地の按分は敷地全体を配分し切る必要があるため共用部分もどこかの用途に配分します。
両者の比率が一致しなくても誤りではありません。

地積規模の大きな宅地にも効いてくる

地積規模の大きな宅地の評価(財産評価基本通達20-2)は評価単位ごとに判定します。
駐車場を建物敷地と一体の1画地にできるかどうかで、
三大都市圏500平方メートル・それ以外1,000平方メートルという面積要件の充足が分かれることがあります。
設例では、建物敷地400平方メートル単独では要件を満たしませんが、
駐車場と一体にすれば600平方メートルとなり、三大都市圏であれば要件を満たします。

普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区にあること、
市街化調整区域・工業専用地域でないこと、
容積率が400%(東京都特別区は300%)未満であることも、あわせて確認してください。

確認しておきたいこと

参考にした条文・通達・公表事例